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【インタビュー中編】『僕だけがいない街』三部けい/いま考えているラストは変わるかもしれない……!?【中編】

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前編では『僕街』誕生秘話を語ってくれた三部先生。そうなってくると気になるのは、今後の展開。三部先生はいったいなにを思い描きながら『僕だけがいない街』という物語をつづっているのだろうか? 三部先生に今後の『僕街』について語っていただいた。

前編はコチラ!
【インタビュー前編】『僕だけがいない街』三部けい/師匠・荒木飛呂彦との関係は……?

後編はコチラ!
【インタビュー後編】 『僕だけがいない街』三部けい./伏線リストと分岐が書かれた秘密のノートがある!?

※2014年の記事を編集し、再公開しています

三部けい

北海道出身。
三部敬、瓦敬助名義でも活動。
代表作である『菜々子さん的な日常』シリーズをコアマガジン、小学館で執筆。
2014年に『僕だけがいない街』でマンガ大賞2014第2位を受賞。

印象的なタイトル

――『僕だけがいない街』というタイトルが印象的です。

第1話のカラーページより。
単行本カバー含め雪景色のなかに浮かぶ作品タイトルは非常に印象深い。

三部 作品の全体のイメージができたときに、タイトルが先にできたんですよ。いくつか案があったなかで、自分としては「これだ!」と思いました。だけど「客観的にはどうなんだろう?」と思って、担当さんに相談してみたんです。そうしたら「いいですね」と言ってもらえて。

担当 この作品の内容のイメージを表すには、『僕だけがいない街』はいいタイトルだなぁ、と。文芸の臭いがするタイトルというか、あまり「ヤングエース」にはないものですから。

三部 少し前のドラマだと『Mother』[注1]ってありますけど、タイトルを聞いただけで「母親のことを描くんだな」ってわかりますよね。俺もそういうストレートなタイトルが好きなんですけど、自分の性質なのか、何かを想像させるようなタイトルのほうが思い浮かぶんですよ。

[注1] 2010年に日本テレビ系列で放映されたドラマ。主演は松雪泰子。

ストーリーはどこまで完成している!?

――物語の全体の構成は、もう決めてあるのでしょうか?

担当 コミックスの構想は比較的早く決まりました。1巻ではどこまで物語を進めるかを決め、そこから各話のエピソードを詰めていく感じですね。

三部 俺は母親が死ぬところまでを1巻だと考えていたんです。でも担当さんから「前の時代にさかのぼるところまで入れられないか?」と相談され、俺も「なるほど。そっちのほうがおもしろい」と思ったんです。それが4話目を描いているときだったので、4話目から急に話がスピードアップしてるんですよ。

第1巻のクライマックスである主人公の母・佐知子との別れ。

担当 チェンジ・オブ・ペースというか、1巻の終わりまでいくと、それまでとはまったく違う世界が始まりますからね。1巻の終わりまで読んでもらえれば、このマンガをおもしろいと思ってくれるはずでは、と考えていました。

――たしかに衝撃的でした。いまストーリーは、どれくらい先まで完成しているのでしょうか?

三部 まだあんまり決めきってはいなんですけどね。話を考えるときは、途中でストーリーが枝分かれして、いくつもの結末ができあがるんです。そのなかから最終的に何を選択するか、という話ですね。

――ではラストがどうなるか、先生自身にもまだわからない、と。

三部 ラストを決めてない……というわけではないんですが、そう大きく違わないモノがいくつかある感じ。先々を考えてネームを考えるんですけど、そこからまた分岐してしまう。毎回ネームを書くときに、頭のなかに4個も5個も枝分かれしたものがあるんです。

『僕だけがいない街』の貴重なネーム。
ここから無限に物語は広がっていく。

――むかし流行ったゲームブックみたいな感じでしょうか?

三部 まさにそんな感じです。だからエンディングも、何パターンか考えてますよ。

――第1巻のあとがきでは、ストーリーに関しては「計算とアドリブで半々」と書いてました。

三部 今この場で「ラストまで話して」と言われたら、話せるんですよ。でも、その通りの内容になるとは限らない。エンディングが変わるかもしれないし、あるいはラストだけ一緒で途中すべてが変わるかもしれない。

担当 極端な話「次回こうなります」と話したところで、いきなり変わる可能性もありますよね。

三部 たとえば「ヤングエース」3月号掲載の「#21【隠れ家 1988.03】」(単行本第4巻収録)では、バスが出てきます。バス以外にも、別の場所という選択肢もありました。どれを選ぶかは、ネームをやる直前に決めるんですね。

このシーンの裏にも、別の『僕街』の物語があった。

――その選択で迷うことはないですか?

三部 結果的に「こっちを選んで良かったな」と思うことはあります。以前は「こっちじゃなかったかな?」と思うこともあったんですけど、この作品(『僕街』)に関しては、ないです。こんな風なやり方なんです。

――では物語が進んだことで、かなり選択肢も絞られてきたんじゃないでしょうか?

三部 そうかもしれません。ただ、今考えているラストを、自分ではそこまで重視していないのかもしれない。たとえば今から半年後であれば、その半年分の経験を積んだ自分であれば、もっといいものを考えつくかもしれない。そういった余地を残しながら描いている感覚はあります。

主人公と作中世界の設定

――三部先生から見て、悟はどんな人間なのでしょうか?

過去と現在を行き来する主人公・悟。

三部 主人公の悟は「こんな奴、いるよな」って感じで描いています。俺、最近は新人賞の審査員をやらせてもらうことがあるんですけど、新人さんの原稿で、なぜそのキャラクターがそのような考えを持つように到ったのか、そこまで考えていないような人物造形をよく見かけるんですよ。そこを考えると、キャラクターの描き方は絶対に違ってくるはずなんです。だから「もったいないな」って思うんですけど、悟はそういうタイプ(の漫画家)をイメージしてました。

――踏み込みきれないタイプ?

担当 イマイチ仕事がうまくいっていないタイプ、ですね。

――ほかの仕事に置き換えた場合でも、この年齢(30歳前後)で自信を持って「俺はうまくやれている!」と胸を張れる人は少ないと思います。

担当 ですから悟は、漫画家という職業は少し特殊ですが、あくまで平均的な、等身大の30歳前後と考えていただければと思います。

――テーマとも関連する年齢ですね。

担当 テーマはいくつかあるんですが、「もしやり直せたら」という部分をリアルに感じる年齢ではないかと思います。

――過去編の1988年は、舞台は北海道に移ります。場所は、昔お住まいだったところをモデルにしてるんですか?

三部 出身地の苫小牧がモデルです。『菜々子さん的な日常DASH!!』[注2]も一緒ですよ。ただ、悟の住んでいるアパートや、雛月の道営住宅、悟たちの小学校など、それぞれモチーフは個別にあって、実際はバラバラに点在していました。それを1カ所に集めたのが、作中の舞台です。

[注2] 瓦敬介名義で発表。小学館のケータイ配信コミックサイト『モバMAN』にて掲載。 北海道の高校を舞台にした、学園コメディ。 もともとは『菜々子さん的な日常』はコアマガジン社の 成年誌『漫画ホットミルク』(休刊後に同社の『コミックメガキューブ』に 移籍)にて連載。コミックスは全2巻。

――1988年だと、三部先生はもう上京されてますよね?

三部 そうですね。とはいえ、1988年当時に帰省したときには、まだ古い建物とか道営住宅もいっぱい残ってました。ですから、自分が子どもの頃とさほど変わらない景色でした。

――作中に出てくる市立美琴小学校は、三部先生の母校がモデル?

18年前、悟が通っていた市立美琴小学校。

三部 ええ。俺が子どもの頃の学校って、建て増し建て増しの校舎だったんです。だから校舎が入り組んでいて、もうわけがわからない。というのも、生徒数がドバッと増えたんですよ。それこそ「どこからやってくるんだろう?」と思うほどで(笑) 教室が足りなくなってプレハブを建てたり、増築をしたり。

――世代的には「団塊ジュニア」[注3]より少し上ですよね。

三部 北海道独特の状況だったんじゃないかな、って思います。夕張の炭坑が閉鎖して、転校生が急に増えたこともありました。それから原野が開発されて、住宅地が増えてきた時期でもあります。

[注3] 一般的には1971(昭和46)~1974(昭和49)年に生まれた世代とされる。 世代人口が多く、公立中学校では1学年に10クラスあるような地方もザラだった。

――都市開発されて人が流入してきて、街が様変わりしようとする過渡期。そういった過渡期における歪みのような事件が、作中で起きるわけですね。この時代を描くにあたって、難しい点はどこでしょう?

三部 当時の資料を探すのが大変です。

担当 あの時代ですと、いまよりも共通言語が多いですよね。だから子どもたちのあいだで流行っているもの、たとえば『ドラクエ3』[注4]とかが出てきます。

[注4] エニックス(現スクウェア・エニックス)より発売されたファミリー コンピュータ用RPG『ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…』。 1988(昭和63)年2月10日に発売されると、 社会現象になるほどの大ブームとなった。

18年前も今と変わらずドラゴンクエストは超人気ゲームだった。

三部 ただ1988年は、俺はもう高校を卒業しているので、このときに子どものあいだで流行っていたものは厳密にはわからないんですよね。だから資料で調べるしかなくて。それが大変です。

 

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【インタビュー】師匠・荒木飛呂彦との関係は……? 『僕だけがいない街』三部けい【前編】

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【インタビュー】伏線リストと分岐が書かれた秘密のノートがある!? 『僕だけがいない街』三部けい【後編】

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プレゼント応募は締め切りました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました!

取材・構成:加山竜司
撮影・辺見真也

※本記事は2014月6月16日に公開されたものを編集し、再公開しています


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