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【インタビュー後編】『僕だけがいない街』三部けい/伏線リストと分岐が書かれた秘密のノートがある!?

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作家の数だけ、マンガの作り方がある。はたして三部けい先生は、どのような方法で作品を生み出しているのか。そして誰もが気になる「真犯人」にも迫る!

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師匠・荒木飛呂彦との関係は……? 『僕だけがいない街』三部けい【前編】

中編はコチラ!
いま考えているラストは変わるかもしれない……!?  『僕だけがいない街』三部けい【中編】

※2014年の記事を編集し、再公開しています

三部けい

北海道出身。
三部敬、瓦敬助名義でも活動。
代表作である『菜々子さん的な日常』シリーズをコアマガジン、小学館で執筆。
2014年に『僕だけがいない街』でマンガ大賞2014第2位を受賞。

三部流「マンガの描き方」

三部 あの、これの中身は撮影はNGでお願いしたいんですが……。

――アイデアノートというか、ネタ帳のようなものですね!

これから先の『僕街』の秘密がつまった一冊!。

三部 連載を始めると、かならず1冊つくるんですよ。連載が長くなったものは、2冊目とかに突入してますが。

――メモや絵がすごくたくさん描かれてあって、切り貼りもしてます。あ、さまざまなデータ類も記載されてます。いや、すごく分厚いですね!

三部 出来事の年表とかも書いて、その都度描き直して更新したりしてます。当時のカレンダーとか、「この日は日曜日じゃん、現実と違う!」みたいなツッコミはされたくないので。それで……、あ、ここに「アイリとの別れ」って書いてますね。

――3巻ラストのシーンですね。ネタ帳であり、メモ帳であり、プロットも兼ねているわけですね。

三部 そうですね、この「アイリとの別れ」についても、以前にも同じものをメモに書いているんです。ただ、そのメモを書いたときとは、想定していた展開が全然違うものになったので、今このタイミングでもう一度出てきた。思いついたことは、とにかく書いて、メモのなかに「置いて」おくんです。そうしないと、忘れちゃいますからね。

第3巻のラストシーンより。
絶望的な状況においても、アイリを気遣う悟のやさしさ!

――ほー、これは確かに物語が分岐してきた経緯がわかるというか……。

三部 ラストの案もじつはいっぱい入ってます。だから、あまり見ないほうがいいですよ(笑)。

――たとえばトラックの運転手の人影(#1【走馬燈 2006.05】)だったり、マルクマ駐車場でのふたつ結びの女の子の影(#4【誘拐未遂 2006.05】)とか、西園(#18【別れの時 2006.05】)の名前とか、読み返したときに「あっ!」となる箇所や伏線が多いです。あまり離れすぎてしまっても、読者が気づかない恐れがありますが、そういったものはどの段階で入れようと決めるんですか?

三部 ネームに入る直前に、このメモ帳にまずプロットを書きます。この段階で、今回やるべきこと、やらなくていいこと、そういったことを決めていきます。それから伏線リストもあるので、どの段階でどの伏線を入れるか、このネーム前の段階で決めてます。

担当 打ち合わせで話すのは、まず「コミックスでどこまで入れるか」。やること自体は決まっているので、それをどこで出すか。その順番を決めます。毎回の話自体については、「何をするか」と「どこで終わるか」を決めます。なので、ネームに入る前の打ち合わせ段階で伏線を含めた大体のことが決まります。基本的には1話30ページのマンガですけど、25ページで終わったほうがいいんじゃないかとか、32ページ使ったほうがいいんじゃないかとか、そういう話をします。

――そのあとにネームに入る、と。かなり手間をかけて作品づくりをしてますね。

三部 これがネームです。

――ほとんど本原稿に近いですね。

ネームの描きこみ具合は人それぞれだが、三部先生は下書きとしても使用できるレベルだ。

三部 そうですね、ネーム兼下書きのような感じです。

――では打ち合わせ段階で大筋が決まっているから、ネームではほとんど直しが入らないんですか?

三部 読み味の問題で、後ろのほうをバッサリ切ったこともありました。怖い感じの引きで終わるネームを描いたんですけど、「その前のここがラストでもいいんじゃない?」と言われて、それで後ろをカットしてオチを活かす……とか。このネーム段階では、「何がいちばん映えるか」を考えます。

作品に影響を与えた子どもとネパールの存在

三部 子どもが生まれる前だったら、この作品は描けてなかったと思います。

家族の存在が大きく作品に影響を与えたと語る三部先生。

担当 三部さん、それよくおっしゃってますよね。

――どういった部分で、そう思うんですか?

三部 子どもが生まれる前だったら、もっと毒々しい話になっていたと思います。

担当 子どもが虐待されるシーンがありますからね。実際にお子さんができると、感情移入の度合いが異なるのではないかと思います。お子さんができる前にこの作品をやっていたら、ヒューマン・ドラマではなく、もっと刺激的なものになったかもしれない。ミステリやサスペンス的な要素ではなく、もっとバイオレンスな作品になっていたかもしれません。

三部 これは担当さんからも言われたんですけど、「もっと自分を切り売るようなものとか、自分の根っこの部分を出していくような要素がもっとあってもいいんじゃないか」と。俺、これまでの作品では、そういった部分はあまり出さずにやってきたんですよ。もちろん、どんなキャラクターであれ、自分のなかから出てきたものではあるんですが。

――「もっと出してほしい」と。

三部 「もっと自分のフェイバリットなものを出して」と。それで別の編集者さんからボンッとお金を渡されて、「ネパール行ってきて」と言われたこともありました。

――ネパール!?

三部 あ、俺ネパールが好きなんですよ。何度も行ってて。子どもが生まれてからは行ってなかったんですけど、6年ぶりに行ってきました。

――ネパールのどこに魅力を感じていますか?

三部 人、ですね。観光地や名所に行くと、「自分をガイドに雇ってくれ」って大人から子どもまで寄ってくる。「恵んでくれ」って人もいる。それが嫌いな人も多いけど、ハマる人はハマります。俺、仲良くなった人が多くて、その人たちに会いに行くような感覚ですね。

――人に会いに行く。

三部 向こうの友人にバイクを預けてあるんです。普段は観光ガイド用に使ってもらってて、俺が行ったときには貸してね、って。あと、街も好きですよ。すごく埃っぽいですけど。

――どのへんの街でしょうか?

三部 首都のカトマンズです。標高が1300メートルだったかな、ちょっと空気が薄いです。街並みがすげえイイんですよ。日本とは違うのに、仏教が混じっているので、どことなく日本っぽいところもある。実際に見たことがないのに懐かしい感じ、ってあるじゃないですか。

普段、先生が使っているペン立てもネパールで購入したもの。
もともとランプだったとのだという。

――作品にも影響してますか?

三部 もっと自分が好きなものだったり、経験だったり、そのときに思っていたことなど、そういった自分の根っこみたいな部分を入れ込んでいこうと思ってます。それを濃くやっているのが『僕街』です。

――となると、『僕街』は、制作にかなり時間がかかる作品ですね。

三部 『僕街』を描くときには、それ用のテンションがありますね。ほかの連載作品もあるんですが、そのままの流れでは描けない。というか、『僕街』はつねに考えていないとアイデアが出せない。普段から『僕街』のテンションでアンテナを張っておいて、それ以外の作品を描くときにモードを切り替えるような感覚です。

――切り替えが大変そうです。とはいえ、3社合同フェア[注1]では、見事に各作品のジャンルが異なってました。

三部 昔の漫画家ってすごいな、って思います。複数の連載にまたがって、月に100ページ以上描いている。なかでも永井豪先生に憧れます。永井先生は頭の中どうなってんだろう、どうやって切り替えているのか。俺、永井豪先生みたいになりたいです。

注1 2013年1月に展開したキャンペーン。『僕だけがいない街』第1巻(角川書店)、『魍魎の揺りかご』第6巻(スクウェア・エニックス)、『菜々子さん的な日常DASH!!』1巻(小学館、瓦敬介名義)と、三部けい先生の三作品のコミックスが同日に発売された。

今後の展開について

――気になる今後の展開ですが、ネットでの評判を見ても、読者のあいだでは「犯人探し」が盛んです。

悟はその瞳を幼い頃から知っていた!
犯人はいったい誰なのか?

三部 俺、ネット見ないんです。Amazonで買い物をするときも、カミさんに頼んでいるくらいなんで。なんとなく伝え聞いてはいるんですけど。

担当 『僕街』には、そういった「犯人探し」の楽しみ方もあるとは思いますので、うかつに「あと○巻続きます」とか言えない部分もあります。

――確かに、ミステリー小説などで、残りページ数から全体の展開が予想できたりすることはあります。読み方としては間違っているんでしょうけど。

担当 もちろん「いきなり次で終わりです」みたいなことはありませんよ(笑)。

――では、お話をまとめるのに必要な分量は、当初の予定と比べてどうでしょう?

三部 あんまり変わらないです。いや、最初に想定したよりは、少し長くなるかも。

担当 マンガの場合、まず月刊や週刊で連載していって、コミックスが発売されて、その結果によってどうなるか(打ち切りなど)、という部分があります。『このマンガがすごい!2014』に選んでいただいて注目されたので、ラストまで望む形で進めていけると思います。

――今後とも楽しみにしてます。ありがとうございました。

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三部けい先生プレゼント応募フォーム

たくさんのご応募、お待ちしております!

プレゼント応募は締め切りました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました!

取材・構成:加山竜司
撮影・辺見真也

※本記事は2014年6月24日に公開されたものを編集し、再公開しています


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