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『地獄のガールフレンド』鳥飼 茜インタビュー 女子ってなんか、めんどくさい。でも女子ってなんか、にくめない!

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人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。※2016年の記事を編集し、再公開しています

今回お話をうかがったのは、鳥飼茜先生!

『このマンガがすごい!2016』オンナ編にランクインした『地獄のガールフレンド』。この作品のみならず、『おんなのいえ』『先生の白い嘘』など、数々の話題作を連発する鳥飼茜先生に、今回、直撃インタビューさせていただきました!
自分をもてあましたアラサー3人娘がひとつ屋根の下で本音をさらけ出し、読んでいると思わず「あるある~」と共感してしまう。鳥飼先生がこの作品をつくるきっかけとはなんだったのか、この作品にこめたテーマは何か? そこには女性漫画家だからこその気づきや想いがあった!

鳥飼茜

大阪府出身。2004年に「別冊少女フレンドDXジュリエット」(講談社)でデビュー。
「このマンガがすごい!2014」オンナ編にランクインした注目作『おんなのいえ』(講談社)、『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)、『バッドベイビーは泣かない』(講談社)など。

他人は理解できないからこそおもしろい

——「このマンガがすごい!2016」オンナ編16位ランクインおめでとうございます。

鳥飼 絶妙な順位をありがとうございます!

——1年半ほど前にインタビューさせていただいた時は、ちょうど『地獄のガールフレンド』の連載が始まった頃でした。『おんなのいえ』、『先生の白い嘘』と3本並行しての連載は、たいへんじゃないですか?

鳥飼 「じごガー」は、いま2巻が出たところですが、担当さんには絵がかわいくなったと言われてますね。

——女性誌連載でも『おんなのいえ』とはまた違うタッチになってますね。

鳥飼 意識的に、絵柄は作品によって変えようと思っているんです。読者も話のトーンも違うし、描いてる側としても気持ちを変えたいというのがあって。「じごガー」は『おんなのいえ』に比べてコミカルで1話も短いのでライトな感じで描かなきゃと思っていたのですが、最初の頃はなかなか絵が決まらなかったかな。お話のトーンが固まるにつれて、目指していたキャラクター性が顔前に出た顔が描けるようになってきた気がします。

——やっぱり作品は描きながら育っていくものなんですね。

鳥飼 カッコよく言うとそうですね。

——この作品はどのような構想からスタートしたのでしょうか。

鳥飼 最初にあったのは、子どもがいる女の人を描くということ。私も子どもがいることもあって……「フィール・ヤング」読者の年齢層にもあうかなと。一方、主人公の要素があまり自分と重なりすぎると距離を置いて描けないかもと……それならほかにも違った境遇の人を置いて、いろんな目線をつくろうと考えたんです。

本作のメインキャラの設定資料を特別に見せていただいた!
それぞれのイメージが細かく記載されている。

——ルームシェアという設定にしたのは?

鳥飼 舞台を家のなかにすると人を自然に描けるかなと。最初は会社の同僚にしようかとも思ったんですけど、それだと広がりすぎそうで。日々の女子同士のおしゃべりみたいなことを描きたかったので。

——キャラクターは身近な人がモデルになっていたりしますか?

鳥飼 そのままというわけではないですけど、ヒントになった人はいます。最初のほうで悠里さんが「人生の目標は目下寿命が1日も早く来ること」なんて言ってますけど、これは飲みにいったときに私の友だちが言ってたことです。「やなことがあるとかじゃないけど、これ以上おもしろいこともなさそう」って……。私は死ぬの超こわいんで、その感じがわからなくって。なんでこんなふうに思えるんだろうと。仲がいい相手でも全然理解できない発想が出てきて驚かされるとともに、知りたいと思うんです。

“私は私のためだけに……”と自分の生き方を語る悠里さん。
しかし気づけば苦しくなっていたことに気づく。

——人ってそれぞれ違うことを考えてるものですよね。共感するばかりが仲がいいこととは限らない。

鳥飼 そうですよね。彼女は決してネガティブなわけじゃないんですよね。彼女は日々激務をこなしてる仕事のできる人で……あ、やっぱり悠里さんに似てるかな。「恋人ができたばかりで浮かれている後輩が会社来て『寝不足なんすよねー』とか言ってくるのがホントだるい」って言ってた(笑)。私は会社勤めの経験がないからこういう話を聞けるのもおもしろいですね。

——「じごガー」の3人は赤の他人という関係からスタートしていますが、この意図するところは?

鳥飼 友だちじゃないことを押し出して描いてるつもりもないんですけどね……でも、友だちじゃないところがいいと言ってくださる読者の方もいるので、そう見えてるのかな? 自分に友だちが少ないので……友だちがいっぱいいる人の話が思いつかないから自然とそうなっているのかも。今って友だちが多くてナンボみたいな風潮がどんどん強くなっているので、そこに一石投じたい……というほど鼻息荒くはないですが(笑)。

——SNSが盛んになるほど、「結局友だちってなんだろう」と考えさせられることが多くなっているかもしれません。

鳥飼 「じごガー」を始めてから、そうしたことをインタビューで聞かれるようになりましたね。「マウンティング女子についてどう思いますか」とか。そういう質問が出るってことは友だち関係に悩んでる人が多いんだなって。

女の子同士はどうしたらスッキリと、ストレスなくつきあえるのか?

——「じごガー」の3人は仲よくしてはいるけど「友だちだよね」という縛り合いはないし、お互いに全肯定しあってないところが読んでいてラクで心地いいんですよね。好きな人の発言だからって必ずしも「そうだよね」と同意しなくてもいい。

鳥飼 そういう感情はどけて描いてますね。

——その瞬間に対しての素直な反応をとらえるという感じ?

鳥飼 そうです。そういう態度をとっていれば、女の人同士はもっとスッキリつきあえると思うんですよね。だれでも自分と相容れないところがあるのは当たり前なのに理解できない考え方や発言に対して、仲よしだから肯定しなきゃいけないと思いこんだり、逆に「わからないからこの人は嫌い」と思ったり、混ぜこぜにすると苦しくなる。

——そういう体験をしたことがありますか?

鳥飼 あります、あります。中学時代、そういうことがいっぱいあってホントにイヤになった時期があって“女友だちいらない”って決めた。それ、1話の冒頭に描きましたね。そこから女の人と距離を取って生きるようになったんです。距離を取ったほうが友だちになりやすい。

——結びあう時に結びあえばいい、と。

鳥飼 いらない時はいらないという距離をとってつきあえば楽だと気づいたんですね。なので、マンガのなかでも徹底的にそうしてます。「じごガー」を読んでこういうふうにつきあえたらラクだなと思ったら取り入れてほしい。そういう人が増えれば私にとっても過ごしやすい世のなかになるということで(笑)。

「女の敵は女」にもの申す!!

——『地獄のガールフレンド』というタイトルにはどんな意味があるのでしょうか。

鳥飼 よくぞ聞いてくださいました(笑)。これは、アメリカで女性初の国務長官になった方のスピーチにあった言葉に影響を受けてつけました。彼女がさまざまなキャリアのなかで痛感したのは「女の人同士で協力しないといけない」ということだったと。割合的に女性の少ない環境でやり抜くのはただでさえ厳しいのに、女同士で足を引っぱりあうことがあるのは無念、少なくとも女同士は助けあわなくちゃダメだと。そこで、彼女が言うには「女同士助けあわない女性には、地獄に専用の場所が待っている」と。すごくカッコいい言葉だと思って、いつか何かに使えたらいいなと。彼女の言葉そのままの意味ではないですけど……苦境をともに助けあい、地獄でもガールフレンドでいられたら、という思いをこめています。

——伝わってますよ! 言われてみれば「地獄」という言葉にマイナスのイメージはまったく感じていませんでした。

鳥飼 そこはタイトルロゴのデザインの力も大きいと思います。1巻が出るとき、デザイナーさんがすごくこだわってポップにしてくださって。「『地獄』という字面が強いから、絵はちょっとでもドロドロしたものを想像させるような要素はなくそう、かわいく軽く」と細かく指示をいただきました。

細部までこだわられたジゴガの表紙。
タイトルと内容に配慮した細くて軽さのあるフォント、レイアウトがますます本作を魅力的にする!

——それでいて、ベタベタした友情関係じゃないこともわかります。

鳥飼 「顔をコミカルに」との指示もありました。たとえば1巻の裏表紙の奈央さん、目が笑ってて瞳を描いてない。これはマンガの鉄則からははずれてるんです。

マンガ表紙の鉄則を打ち破ることもいとわない!
「じごガー」単行本のデザインを担当するのは、数多くのマンガのデザインを手がけ、定評のある名和田耕平氏だ。

——そういえばそうですね。

鳥飼 奈央さんが一番男ウケするキャラで、「女の敵の女」みたいに見えたら損だからとにかく無害化してくれ、作品ののんびりしたムードが伝わらないとダメ、という指示でこの顔になったんです。最初は正直やかましい人だなぁと思いましたが(笑)、最終的には納得がいきました。このデザイナーさん、なんて賢い人なんだろうと……。

——そこまで深く考えられていたんですね。たしかに、女性って絵から情報を読みとって想像する力に長けていますし。女3人のなかにひとりモテるキャラがいた場合、仮想敵ポジションを予想しがちではあります。マンガ的にはモテる女は性格悪い役割を与えられがちですし。

鳥飼 ステレオタイプがとにかく嫌いなんですよね。そういうキャラクターを描くのは苦痛だから、そもそも描けない。がんばってステレオタイプから離そうとしているわけではないです。ともするとわかりにくいキャラクターになってしまうから難しくはあるんですが。モテるのは奈央さんの一要素で、女の人から見ておもしろい人だということが伝わるようにしたい。

——そうでなければ多くの女性読者は、加南さんか悠里さんの目線で読んでしまうはず。「じごガー」はだれかひとりに寄るでもなく、3人のおしゃべりに混ざりながら読んでいる感覚があります。

鳥飼 このなかに入りたいっていう感想はよくいただきますね。

仕事場のおしゃべりのなかからエピソードが生まれる

——ツッコミあうではなく、3人それぞれの素直な言葉が出てくるおしゃべりがとにかく心地よいのですが、お話はどんなふうに考えているのですか?

鳥飼 アシスタントさんとのおしゃべりのなかでふくらんできますね。これはもう共作じゃないか、くらいに。私、ニュースサイトを見るのが好きなんです。「○○な女の特徴とは?」とか……くだらないなとか思いながらも読んじゃう。女性誌も好きですし。こういうところから得た「現代の男女関係はこうである」「こんなとき男の子にどんな態度をとるか」みたいなネタをアシスタントさんたちとああだこうだ言いながら仕事してるんですね。私ならこうする、いや私はそれ無理とか、いろんな意見が出てきて白熱する。そういう雰囲気がごくリアルタイムで反映されてますね。

——テーマが尽きることはなさそうですね。

鳥飼 もう宝庫ですよ。アシスタントさんがいなければできない作品かも。

——「じごガー」の場合はたまに“大きな男の子”がひとりまぎれこんでますが。

鳥飼 うちの職場にも男の子がひとりいるんですよ。

——え!? リアル鹿谷くんですか?

「じごガー」のスパイス担当(?)・鹿谷くん。
「処女厨」を宣言する彼だからこそ安心できる……いや、安心できるのか!?

鳥飼 いや……鹿ちゃんじゃないですね。もっとずっとまじめな人です。「じごガー」に鹿谷くんを入れたのは、男の子がひとり入ると話がしまるというか、ピリッとするからです。絵的な意味でも。

——鹿谷くんは強烈なキャラですしね。彼の男子ならではの意見も、3人の会話に花を添えているのも注目しています。

 

“女子コミュニティ”にはスパイス(男子)も必要!? ……ということで、今回はここまで! 鳥飼先生のインタビューの続きもお見逃しなく☆

取材・構成:粟生こずえ
撮影:高部哲男

©鳥飼茜/祥伝社 フィールコミックス

※本記事は2016年4月9日に公開されたものを編集し再公開しています


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