堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』インタビュー! 新世代の王道少年マンガはアメコミヒーロー×学園もの! 人気炸裂(SMASH!!)の連載へと短編を進化させた方法とは!?
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人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、堀越耕平先生!
ヒーローとバトル、学園と友情、そして特訓と成長・勝利……まさに新世代の“The 王道”な少年マンガ、『僕のヒーローアカデミア』!
『このマンガがすごい!2016』のオトコ編ランキングでは第5位にランクインし、テレビアニメも絶賛放送中の本作、2016年度の最注目作品であることは間違いない!
今回のインタビューでは、この人気作のベースとなった短編作品のことから、スーパーヒーローを扱ったマンガを描こうと考えた際の意外な悩み、そして文字どおり「個性」豊かな人気キャラクターたちを生み出す上での秘密や、堀越先生が思わず「オッ?」と思った読者の反応などを、バッチリと聞いてみました! ※2016年の記事を編集し再掲載しています
著者:堀越耕平
愛知県出身。
大学在学中に読み切り「ヌケガラ」で第72回手塚賞佳作を受賞。
その後「赤マルジャンプ」に、読み切り「テンコ」「僕のヒーロー」「進化ラプソディ」を掲載したのち、「週刊少年ジャンプ」2010年2号に「逢魔ヶ刻動物園」を掲載。この短編作品をベースにした同タイトルの作品『逢魔ヶ刻動物園』を2010年から2011年まで連載する。2012年には同誌で『戦星のバルジ』を連載。
そして2014年、「ジャンプ」にて『僕のヒーローアカデミア』の連載をスタート。
2016年4月からはMBS・TBS系列にて、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』が絶賛放送中!
ヒーロー×学園のアイデアは「ヒーローになるまでの経緯」を知りたいから!?
――『このマンガがすごい!2016』でのトップ10ランクインおめでとうございます。アンケートでは幅広い層から票を得ていました。本作が大きな支持を受けたことについて、率直なご感想をお聞かせください。
堀越 とてもありがたいです。ただ、それ以上に気をつけないと……と感じました。連載時期のタイミングなど、運よく時流に乗っていたと思うので「これは自分の実力以上の評価をいただいている状態だ」と言い聞かせています。
――連載開始前に執筆された短編「僕のヒーロー」が、本作の原型になっているとうかがいました。収録されている『逢魔ヶ刻動物園』の単行本にも“もう一回描き直したいくらい思い入れの強いマンガ”と書かれていましたが、新連載のベースとした理由は?
堀越 世界観とキャラクターが、今までのマンガのなかでもっとも描きやすかったからです。連載をまたするなら、これしかない、という思いでした。
――「僕のヒーロー」と『僕のヒーローアカデミア』は、“スーパーヒーローやスーパーヴィラン[注1]が実在する世界に生きる普通の人間という主人公像”や“「闘う力を持っているからヒーローなのか?」というテーマ”などは共通していますが、かなり印象の異なる作品ですよね。
堀越 読み切りではサラリーマンが主人公でしたからね。
[注1]スーパーヴィラン フィクションの世界、とくにアメリカン・コミックスに登場する、怪人・モンスターや、主人公(スーパーヒーロー)と敵対するキャラクターのこと。日本でも有名なスーパーヴィランに、『バットマン』のジョーカーや『スパイダーマン』のヴェノムなど。
――どういったところから着想を得て、主人公の年齢を引き下げ、学園ものの要素を前面に押しだすことになったのでしょうか?
堀越 僕自身、一般的な社会人経験がないこともあって、この設定(主人公がサラリーマン)で少年マンガはムリだろうと考えました。初めの頃はヒーローとして、敵とガンガン戦うものを描こうとしていましたが、なかなかしっくりこないので、そもそも自分はヒーローものの、どこにワクワクしていたのか振りかえってみたところ、「ヒーローになるまでの経緯」に惹かれていたんだと気付きました。そこに気付いてからは、自然と学園ものになっていった気がします。

舞台が学園となったのは必然!?
――スーパーヒーローもの+学園もののマンガというと、ちょっとニュアンスは違いますが、マーベル・コミックスの『ニュー・ミュータンツ』や『ジェネレーションX』[注2]、またかつての「週刊少年ジャンプ」連載作ですと『ウイングマン』[注3]などがあります。これらの先行作品について、意識している部分はあるのでしょうか。
堀越 そのあたりは意識しないよう心がけています。意識すると、どうしても比べてしまって凹むので……。自分が楽しく描けるようにしています。
[注2]『ニュー・ミュータンツ』や『ジェネレーションX』 ともに「X-MEN」シリーズのひとつ。若きミュータントたちによるヒーローチームの活躍を描く。
[注3]『ウイングマン』 桂正和の連載デビュー作。ヒーローに憧れる中学生・広野健太が、書いたことを現実のものとさせる不思議なノートの力で、スーパーヒーロー・ウイングマンへと変身。ヒーローとしても少年としても成長していく姿を描く。1984年には『夢戦士ウイングマン』のタイトルでアニメ化。
――『ウイングマン』の桂正和先生は、アメコミ好きを公言していますが、やはり過去に「ジャンプ」で連載をされていた村田雄介先生もアメコミヒーローのファン[注4]であると語り、作画を担当されている『ワンパンマン』では、その影響も見られるように思います。連載開始時、すでに始まっていた『ワンパンマン』は読まれていましたか?
堀越 読んでいました。ヒーローを描きたいと思った時、すぐに「でももう『ワンパンマン』がある」と考え、しばらくは「描きたい、でももう……」を繰りかえしていました。
[注4]村田雄介先生もアメコミヒーローのファン 最近では、並行世界のスパイダーマンが集結する話題作『スパイダーバース』(ヴィレッジブックス)で、日本オリジナルのカバーイラストを担当。
――では、執筆を決めたきっかけは?
堀越 ある編集さんに、「キャラが違えば別ものだよ」と背中を押していただけたことで、描き始めることができました。「職業ヒーローもの」という点で、すでに『ワンパンマン』や『TIGER & BUNNY』[注5]など大ヒット作があるなか、比べられる、パクリだと言われる……そういった大きな壁にぶつかることはわかっていたので、先ほど述べたように、先行作品は意識しないよう、自分が楽しく描けるよう努めました。ただ、ディズニーの『スカイ・ハイ』[注6]は、恥ずかしながら連載が始まってから知りまして……設定が酷似していたことに愕然とした記憶があります。知ってからしばらく、頭が真っ白になりました。
[注5]『TIGER & BUNNY』 サンライズ制作によるTVアニメシリーズ。NEXTと呼ばれる特殊能力者たちが、スポンサー企業の援助を受け「プロの職業ヒーロー」として活動する世界が舞台。
[注6]『スカイ・ハイ』 2006年に日本公開された、ディズニー制作の実写映画。さまざまな特殊能力を持った子どもたちが、立派なスーパーヒーローに成長するため、空の上にある秘密のヒーロー学校「スカイ・ハイ」で日々を送る。
――でも『僕のヒーローアカデミア』は、それこそ少し類似した設定がある『スカイ・ハイ』のような先行作品と比べても、アメコミテイストが少年マンガという型のなかで、とてもよいアクセントになっているのもあり、かなりオリジナリティの高い作品になっていると感じます。そのアメコミテイストなのですが、海外コミックの愛読者とそうではない人たちの間には、いわゆる“アメコミっぽさ”にも大きなギャップがありますよね。そういった部分のさじ加減は、やはり意識して描いてらっしゃるのですか?
堀越 アクセント程度に、とは常々考えています。アメコミっぽさを出しすぎると「ジャンプ」の読者には、ただただ読みづらいものになるだけなので。オノマトペ(描き文字の擬音)も英語が多くなりすぎないようにしています。半分以上は自己満足なので、やりすぎると押しつけがましくなると思ってます。

――「僕のヒーロー」は、どちらかというと日本の特撮やマンガのヒーロー的アプローチでしたが、連載であえて日本人になじみの薄いアメコミ的な要素を入れてきた理由は?
堀越 「(作中の他のキャラクターと)画風の違うアメリカンヒーロー」という、オールマイトのキャラクターが生まれて、そこに引っ張られていった感じです。

堀越流「個性」創作術! そしてヒーロー&ヴィランのあり方とは……
――そのオールマイトは、スーパーマン[注7]的なイメージのヒーローとなっていますが、デザインで目を引くのはツノのような前髪です。主人公・デク(緑谷出久)のヒーロースーツのモチーフにもなっていますが、どこからこのような奇抜なデザインの発想が?
堀越 オールマイトと名づける前段階、ヴィクトリーというキャラだった頃の名残りです。あの前髪は“Victory(ヴィクトリー)”の“V”を模していました。そり立っている髪が雄々しく頼もしいと感じたので、名前を変えた後も、そのまま使っています。
[注7]スーパーマン DCコミック刊行の『スーパーマン』や『ジャスティス・リーグ』などに登場するスーパーヒーロー。崩壊したクリプトン星から地球にきた宇宙人で、怪力・飛行能力・透視能力・目からの熱戦といった特殊能力を持つ。リチャード・ドナー監督による1978年公開の実写映画や、近年公開されたザック・スナイダー監督による一連の『マン・オブ・スティール』『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』シリーズ作品を筆頭に、メディア化も多数。
――デクのデザインは、ストレートに「僕のヒーロー」の主人公・緑谷弱の年齢を引き下げた感じですが、そもそも「緑谷」という名字の由来は?
堀越 必ずしもそうではありませんが、「緑」は“主役になれない色”という感じがしたので使いました。主役にはなりえない地味な存在をつくりたかったので。オールマイトのデザインのなかには入っていない色でもあるので、『僕のヒーローアカデミア』では物語的にもマッチすると思い、短編からそのまま使っています。

――どのキャラクターも印象的で、いい名前だと思うのですが、堀越先生ご本人は、特に「麗日お茶子」というネーミングを会心のものとおっしゃられていましたよね。
堀越 語感のよさと、能力の掛けあわせ(言葉遊び)がマッチしたので。
――初期案の爆豪勝己……これもスゴい名前ですが(笑)、彼は今のように、いわゆる「攻撃的な性格」で考えてはいなかったとのことですが、その場合もデクと爆豪が戦い、高めあっていくというストーリーラインは変わらない予定だったのでしょうか。
堀越 最初は高めあう、というより、主人公が一方的に爆豪を追いかけていくような形を考えていました。
――現在の、“敵といえば敵だけど悪役ではない”というポジションは、ユニークですが、同時にデリケートに扱わなければならなそうだと思ってしまうのですが。
堀越 今のほうが確実によいのですが、やっぱりそのぶん、とり扱いが難しいです。

――クラスメイト、教師、ヴィラン連合と、とてつもないキャラクターの数で、そのほとんどが特徴的な能力(「個性」)を持っています。たとえば、クラスメイトの能力などは、連載準備期間にほとんど決めていた感じなのでしょうか。
堀越 生徒や先生の能力は、ほぼ連載前に決めていました。敵もだいたいは決まっていましたね。
――能力を振り分ける基準は? たとえば、生徒の場合は強くしすぎない、強くても扱いづらくする……といった決まりはあったのでしょうか。
堀越 一部は強く、そのほかのキャラクターは強さに見あうデメリットやハンデをつけました。強い人は思いっきり強くあってほしいので、デメリットはあえてつけていません。
――怪力、爆破、重力操作、高速移動という主人公たちメインキャラの能力チョイスは、どういった発想から? 単行本のおまけページを見ると、必ずしも最初からこの組みあわせで考えられていなかったようですが。
堀越 メインはなるべく「わかりやすい能力」で固めました。セリフで説明しないとわからないような能力じゃなく、絵を見てパッとわかるものが望ましいと考えていましたので。
――では、主人公たちと敵対するヴィラン連合の描写で気をつけていること、力を入れている部分はどこでしょうか。心なしか、ヴィランのほうが描きこみも多いような……?
堀越 敵のほうが単純に趣味が反映されやすいので、描きこみが多くなってしまいます。どこか恐ろしい感じを出したくて、そうなると描きこみに頼らざるをえなくなっていきますから。あと、敵の心情説明などは、なるべく抑えるようにしています。

――さまざまな立ち位置のヒーロー・ヴィランで入り乱れる『僕のヒーローアカデミア』ですが、執筆する上で「ヒーロー・ヴィランはこうであるべき!」という意識は持っていますか?
堀越 ヒーローは活躍をした時、読者が「よくやった!」と思えるように心がけています。不安を取りのぞく、安心させるような。なので、ヴィランはその不安を与える存在、恐ろしい存在であってほしいですね。
――読者のみなさんの反応ということで言いますと、「最近の少年マンガでは、修行シーンの読者ウケが悪い」という話を聞いたことがあります。ただ、本作におけるデクの場合は、どうしても特訓が欠かせないキャラクターになりますよね。
堀越 本当はもっとじっくりと、デクに身体づくりや筋トレをさせたいんです。ただ、そのような単調なシーンをおもしろく描ける実力は、まだ自分にはないと思っています。模索中です。
――ド派手なバトルや地道な特訓といった、ヒーローを扱った作品ならではのシーンも本作の見どころですが、やはりヒーロー×学園ものということで、個々の生徒たちの口ぐせや表情も含めたキャラ造形が、とても魅力的です。とくに「梅雨ちゃん」こと蛙吹梅雨は、読者人気が高いと聞きます。少年マンガに登場する女性キャラとしては、ちょっと特殊な造形だと思うのですが……。
堀越 梅雨の人気は予想だにしていませんでした。自分はなんとなく気に入っていたのですが、読者の方にも好評いただけた時はとてもうれしかったです。

――じつは以前、アニメ版の声優さんにインタビューをする機会があったのですが、その際も異常なまでの梅雨ちゃん人気を感じました(笑)。ほか、読者のみなさんからのキャラクターに対する反応で、印象的なものは?
堀越 爆豪も「(自分は)好きだけど、嫌われるだろうな」と思っていたので、人気が出てうれしかったです。逆に峰田(実)なんかは、描いていておもしろいのですが、人気投票はイマイチで「あらら……」となりましたね(笑)。

最新単行本9巻も絶賛発売中の『僕のヒーローアカデミア』、その誕生の秘密にせまった今回のインタビュー。
次回は、堀越耕平先生が影響を受けたマンガ・映画、さらに『僕のヒーローアカデミア』ファンにオススメするアメリカン・コミックスなど、よりパーソナルかつマニアックな部分にせまります!
そして、気になる今後の展開も……!? 乞うご期待!
取材・構成:ガイガン山崎・編集部
(C)堀越耕平/集英社




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