『ミステリと言う勿れ』 第1巻 (田村由美) ロングレビュー! 「ミステリと言う勿れ」…これいかに。 その答えは、「語り」で謎と人々の深層心理を暴き出す、カレー大好き天パ大学生にあり!?
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話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『ミステリと言う勿れ』
『ミステリと言う勿れ』著者の田村由美先生から、コメントをいただきました!
著者:田村由美
著者:田村由美
新作シリーズを読んでいただきありがとうございます!
今まで描いてきたお話とは若干違うアプローチの仕方でつくってるので、どうなることやらわからないのですが、楽しんでいただけたら幸せです。
第2巻は5月10日頃発売予定だそうです。どうぞよろしくお願いいたします!
フラワーズ本誌もよろしく!
『BASARA』などで知られる田村由美の最新作は、彼女なし・友だちなしの大学生が主人公のミステリーだ。
主人公の名前は久能整(くのう・ととのう)。定期的に美容院に通い、天然パーマが膨らみすぎないように整えている。大学生であること、ひとり暮らしをしていること、友人や恋人がいなくても快適に過ごしているという以外に、彼のバックボーンはほとんど明らかにされていない。

機嫌よくカレーを作っていたある日、整は殺人の疑いをかけられ、複数人の刑事から取り調べを受けることに。

整は少しもうろたえず(少なくとも、そのようにみえる)、刑事たちが胸に抱えている「痛いところ」を次々いい当て、挑発めいた言葉を吐く。しかし整のひょうひょうとした物腰に、若手刑事たちは少しずつ興味をそそられ、影響を受け始める。整の語る飾り気のない言葉は、ときに残酷に「そこにある事実」をいい当てる一方で、聞き手にとって大きないやしとなることがある。だれもいってくれなかったこと、でもだれかにいってほしかったこと。そういうところを、ずばりといいきってしまうのだ。
整の「なんかこいつスゴイぞ」感に刑事たちが気づき始めた頃、事件は思わぬ展開をみせはじめ……。


ついに整は、警察から一歩も出ないままに、真犯人をつきとめる。
整はいう。「真実は人の数だけあるが、事実はひとつしかない」と。客観的な事実はどの角度からみても変わらないが、虐げた側と虐げられた側とでは、まったく違う記憶となる。人間には感情がある。主観をそぎ落とした事実と向きあうのは、ときにとても難しい。

整がひょうひょうとしているのがいい。正義感も反骨心も感じられないところがいい(実際のところ、彼なりにいろいろあるのかもしれないけれど)。大げさな言葉で人を断罪したりしないところが、とてもいい。
本作のタイトルは『ミステリと言う勿れ』。こんなに傑作の“ミステリ”なのに、このタイトルである。

サラリと現れてサラリと謎を解く、整のちょっと天邪鬼な存在感に重なるかもしれない。とても素敵なタイトルだと思う。

<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。
©田村由美/小学館フラワーコミックスα







