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【インタビュー】山口貴由『衛府の七忍』ほかの漫画家も描いた、宮本武蔵に本作で初チャレンジ! 描きたかった「俺の武蔵」とは……!?

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人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、山口貴由先生!

徳川家康が力をふるう乱世を舞台に、「怨身忍者」として生まれ変わった少年・カクゴらの戦いを描いた残酷時代劇『衛府の七忍』。『シグルイ』『エクゾスカル零』『覚悟のススメ』で読者からアツい支持を集める漫画家・山口貴由先生の最新作は、『このマンガがすごい!2018』オトコ編にランクインしました。

今回、最新第5巻の発売を記念し、著者の山口貴由先生にインタビューをさせていただきました。本作の制作秘話はもちろん、キャラクターづくりの話など、いろいろ貴重なお話がでてくるなか、前回のインタビューでは、じつは山口先生が「怪獣」好きだということが発覚! 話がさらに広がって、意外な過去も判明しちゃった!?

<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】山口貴由『衛府の七忍』読者にウケてほしくて描いている! ――著者の「パねぇ」エンターテインメント精神に迫る

著者:山口貴由

1966年生まれ。1985年マンガデビュー。小池一夫の弟子。代表作『覚悟のススメ』『シグルイ』(両作品とも秋田書店)。「月刊チャンピオンRED」(秋田書店)にて『衛府の七忍』連載中。
3月19日(月)に『衛府の七忍』第5巻が発売。

過去には怪獣デザインのオファーも!? 意外な秘話が明らかに

――今回のインタビューでは山口先生の作品のルーツ的なところもうかがおうと思っていたのですが、それが「怪獣」だというのはやや意外でした(前回のインタビュー参照)。

山口  そうですか? わりと怪獣は出してるつもりだったので、バレバレかと思ってましたけど(笑)。

――もちろん、お好きだろうなとは思いつつ、どちらかといえば変身ヒーローや怪人寄りなのかなと。もしくは永井豪・石川賢のラインの影響が強いものだと勝手に想像をしてましたので。

(一同笑)。

山口  じつは圧倒的に怪獣なんです。おそらく人生で一番数多く観た映画って『ゴジラ対メカゴジラ』だと思いますし(笑)。

『ゴジラ対メカゴジラ』は「ゴジラシリーズ」の第14作。
ロボット怪獣「メカゴジラ」とゴジラの闘いが当時話題を呼んだ。

――一作目の『ゴジラ』や『モスラ対ゴジラ』ではないあたり、かなりガチっぽい気もしますね。

山口  あのメカゴジラの「ここまでやるか」っていう圧倒的な光線やミサイルの攻撃はスゴイですよ。背負ってる音楽も伊福部昭の重厚な音楽とは違ってジャズなのもいいですし、あとキングシーサーも好きですね。さんざん目覚めの歌をフルコーラスで引っ張ってるのに、思ったほど活躍しないところが(笑)。

――話を聞いてるうちに、たしかに過剰なノリなどのルーツとしてわかるような気もしてきました。ウルトラシリーズのほうも、やはり『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』より、『ウルトラマンA』なんですか?

山口  はい。わりとマジメな話、『ウルトラマンA』の最終回で「やさしさを失わないでくれ」から始まるメッセージがあるじゃないですか。そこで語られている「互いに助けあい、どこの国の人たちとも友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ」といった精神は、『衛府の七忍』の根底にあるものなんです。ある意味、人種や性別を超えて、命が平等に存在する世界を目指してますから。まぁ、そういうのとはまったく別で、いつか地底怪獣を出したいなと思ってるんですけど……。どんな展開を考えても、自然と地底怪獣が出てくるのは無理があるんですよね(笑)。

――(一同笑)。

――まさかとは思いますけど、散[はらら](本作では波裸羅)が男女一体だったり、居城が「ガラン城」っていうのも『A』の影響だったり……?

山口  いや、ガランは仏教の「伽藍」のほうの意味で使ってます。超獣のガランもいいですけどね。漫画家に操られてるし(笑)。あと、まったくの余談ですけど、『シグルイ』の頃に『ウルトラマンメビウス』が放送されていたんですけど、そこで関わっておられた梶研吾さんが先輩でして、一度怪獣のデザインを考えてみないかって誘われたこともあったんです。でも逆に好きすぎて、軽い気持ちでは引き受けられなくて「検討させてください」みたいになってしまったんですけど、今から考えるとなんで引き受けなかったんだってメチャクチャ後悔してますよ。

――それは見てみたかったですね! 今からでも機会があれば、ぜひチャレンジしていただきたく思いますが。最近は東映作品のほうですけど、久正人さんや麻宮騎亜さんのように漫画家の方がクリーチャーデザインをされるケースも増えていますし。

山口  いやいや、本職の方には敵わないですよ! ……って、こんな話ばかりで大丈夫なんですか?(笑)

――すみません、つい興味深い話だったもので。

で、脱線したついで……というのもなんですが、いわゆるオマージュ的な遊びも『衛府の七忍』には時おり盛られていますよね? たとえば巨具足の「舞六剣(ぶろっけん)」は『エクゾスカル零』にも同じ名前のものは出ていますけど、今回は首を抱えた姿で登場していて「そっちのブロッケンか!」みたいなのとか。

第5巻でそのスケールをいかんなく現した巨具足「舞六剣(ぶろっけん)」!
一瞬「違うマンガを読んでいたのか?」と思ってしまうほどのインパクトだ。

山口  そこに深い考えはいっさいなくて、ただ「好きだから」でやっちゃってますね。レジイナの家臣も、まぁキリシタンということで西洋のモンスターがモデルでもいいかなと思ったので、ドラキュラ・狼男・フランケンっていうおなじみのメンツにしてみたり。あれはリアルタッチで藤子A先生のキャラを描いてみたいっていう、それだけです。

――そういう屈託のなさも『衛府の七忍』ならではかもしれないですね。

西洋モンスターをモチーフにしたという家臣たち。こういったキャラクターデザインなどのマンガづくりにおいての盛りこみが、マンガ読者の心を掴んで離さない山口先生と本作の魅力なのだろう。

「どセンターじゃないおもしろさ」を伝えたくて……

――では話を本筋に戻して、ほかに本作で意識していることなどはありますか?

山口  もう30年近く描いているので、あんまり同じような絵を慣れで描いちゃわないよう、なるべく違うアングルで描こうとしていたりはしますが……。あとは作品に向きあう時の気持ちですね。こう、「もっと生きてやろう!」みたいな日にしか『衛府の七忍』は描かないようにしていて。作家と作品は向きあってるものだし、どういう気持ちで描いてるんだというところはリンクさせたいというのは以前からの考えなんですけど、今回はたとえばキックボクシングの先生に褒められたとか、長いこと既読スルーだったメッセージに返信が来たとか(一同笑)。そういううれしいことがあった日に原稿に取り組むようにしてるんです。その活き活きした気持ちを作品に込められたらいいなって。

――逆に「今日はなんか違うな」みたいな日があった場合、いっさい原稿には手を付けないんですか?

山口  そうなんです。いちおうできてはいるんだけど、「なんか血が通ってないな……」って感じる時はあって。そういう時は気持ちを込めたいので、「ちょっとまだ」みたいなことはありますね。

――担当編集さんとしては、そのあたりどう受け止めておられるのでしょうか?

担当  まぁ、だいぶ、だいぶ(強調)困りつつ(笑)。それでも上がってきた原稿の仕上がりを見れば、間違いないなとは思っております。

山口  音楽とかでも、メロディーとリズムは合ってるのに、なんか乗れない曲ってあるじゃないですか。そういう気持ち悪さよりは、気持ちが入ってるほうがいいかなって。まぁ、これベテランなのに、こんな新人みたいなこといってちゃダメなんですけど(笑)。

――(一同笑)

――いや、むしろ新人には許されない気もしますけど?

山口  そうかもしれないですね(笑)。とにかく『シグルイ』の頃とは絵もだいぶ違うと思うんですよ。“ワクワク感”が線に出てるというか。もしかすると「線が荒れてる」っていわれるかもしれないですけど、今はそれでもかまわないと思って描いてます。それぐらい気持ちがあふれてるんで。こんなやり方をしてちゃ、破滅するのはわかってるんですけどね。

でも、その破滅も込みで見せてやろうかなって、それぐらいの心がまえです。もう僕も50歳を越えて“幸せのチケット”みたいなのは完全に捨ててるといいますか……。一般的な「アンドロメダ行きの列車」は見送ったようなところはあるんですけど(笑)、それで光るチケットってのもあると思うんですよ。それを作品にぶつけ続けていきたいなと。

――そのルートじゃないと見えないことってありますからね。

山口  「どセンターじゃないおもしろさ」みたいな、その感覚が少しでも伝わるといいんですけど。

ファン注目の「宮本武蔵編」が収録された、最新第5巻について

――では、新刊となります第5巻について、特に注目していただきたいところをお聞かせください。

山口  前巻に引き続き、メインとなるのは「宮本武蔵編」となりますけど……。ここは特に描いていて疾走感が自分にもあったので、それをページをめくるたびにグイグイ感じていただけるといいなと思います。

読者も猛る「宮本武蔵編」。相手をものともせず、剣をふるい続ける武蔵の戦いっぷりはぜひその目でたしかめてほしい!

――じつは『シグルイ』の頃に『このマンガがすごい!』本誌に掲載された過去のインタビューでは、「宮本武蔵のような名のある剣豪にはあまり興味が持てない」とコメントされていて、要はそれより「名もない剣士」のほうに惹かれるということだったんですけど、それから時間を経て心境の変化のようなものはあったんでしょうか?

山口  今でも基本的には同じ考えはあるんですけど、徳川家康と同じく、立派に描かれてるものとは違う角度からアプローチしてみたいということですね。あと、武蔵は井上雄彦さん板垣恵介さんが描いた作品もあるので、「俺だったらこう描く」みたいなところでも、すごくやりがいを感じられました。幸い、この「宮本武蔵編」は連載中から評判がよくて、「目指してたのはこういうことだったんじゃないの?」って自分でもずっといってましたけど。最初からこれでいくべきだったんじゃないのかって(笑)。

最新第5巻では怨身忍者となったキリシタンの少女・レジイナと対峙する宮本武蔵。

――それと、これまで単行本化に際して、連載時のものに加筆されたり再構成されたりすることも多かったですけど、今回もやはり同様に手を入れられているのでしょうか?

担当  修正のある箇所に付箋を貼ってるんですけど、ほとんどのページに付箋がありますね。

山口  いつまでもあきらめが悪いと思われそうですけど、連載のページ数で掲載される時と単行本とでは、どうしても盛りあがりのリズムや流れが変わってきちゃうんですよ。それを見越して、最初からバシッと最高のものを描ければいいんですけど……。まぁ、連載と単行本とで2度楽しめるという受け止め方をしていただければと。

今回のインタビューでは、特別に山口先生のネームを拝見させていただいた!

――では、今後のことも含めて、最後に総括していただけると幸いです。

山口  ここまでお話したこととも重なりますけど、とにかく『衛府の七忍』は過去の作品と比べても、決してストイックではない、むしろポップなところが前面に出ていると思うので、そこを楽しんでいただきたいですね。それに、今は読み手の読解力がすごくて、いろんなことを深読みしていただけるのもありがたいことです。ときにはこちらが考えてもいなかったようなところまで読みこんでくれている人もいたりして、そういうコメントは僕としても興味深く読ませていただくこともあります。

――もしかすると、ときには「それは曲解では?」というようなこともあるかもしれませんけど、それもアリなほうでしょうか?

山口  どんどん自由に解釈していただいてかまいません。ただ、今作は過激な描写はあるにせよ、読んで落ちこませようとして描いているわけではないので、「読んでいて気持ちが落ちこんだ」っていわれると、それだけは棘が刺さったような感覚になるときがありますけど。

――推しのキャラクターが絶命したり、そういう悲しみなんでしょうかね?

山口  もしそうだとしても、あまり落ち込まないでいただきたいですね。僕の作品の場合、またどこかで転生して活躍することもあると思いますから(笑)。

さらに今回は貴重なカラーカット3点も拝見させていただいた。
最新5巻表紙の桃太郎、宮本武蔵、そして第5巻に登場する少女・テヤン。人物たちが鮮やかに生き生きと映っている。

取材・構成:大黒秀一

<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】山口貴由『衛府の七忍』読者にウケてほしくて描いている! ――著者の「パねぇ」エンターテインメント精神に迫る

©山口貴由(秋田書店)2015-2018


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