『猫と竜』(佐々木泉(画)アマラ(作)大熊まい(キャラクター原案)) ロングレビュー! 人間の言葉を話し、魔法を使う猫が、竜を育てる!? 猫・竜・人間の3者が織りなす、やさしいファンタジー
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話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『このマンガがすごい!comics 猫と竜』
『猫と竜』作画担当の佐々木泉先生から、コメントをいただきました!
佐々木 泉
久しぶりに漫画を描かせていただいてます。感謝。著作に「墨戯王べいふつ」(小学館)、「江南行」(メディアファクトリー)、「真田幸村 異聞」(アスキー・メディアワークス)など。
「猫」と「竜」は一見つながりがないようでいて、意外と共通項も多い。
竜はそもそも自然の偉大なる力の象徴であり、人間が左右できない気まぐれな属性の持ち主。一方、猫も気まぐれの代名詞のような生き物だ。
また、西洋の伝承やファンタジーでは猫は魔女の眷族であり、使い魔として存在感を発揮する。かたや、竜ならぬドラゴンも強大な魔獣としてシグルド、聖ゲオルギウスなど数々の英雄の前に立ちはだかってきた。
残念ながらどちらも本質的には人間の側ではないようだ。だが本作では、その壁を通じあう心で乗り越えている。

しかし、本作では3者は種族の壁を乗りこえていく。
『猫と竜』は、小説投稿サイト「小説家になろう」の同名ファンタジー小説のコミカライズ版。猫たちの絵のかわいさもあいまって、小説以上にハートウォーミングな作品にしあがっている。
とある王国の森には、魔法を使う猫・ケットシーたちと竜が住んでいた。
人間から「皇竜」と恐れられる竜だが、じつは卵を産んだ母竜が人間に殺され、猫に育てられた身。そんな縁もあり、長い寿命のなかで今度は代々の子猫たちを育て魔法を教えてきた……。

竜になつく子猫たちの様子に見入ってしまいます。
冒険もののような雰囲気を漂わせてはいるが、基本は日常もの。好奇心旺盛で言葉を話せる猫たちは人間が好きで、街に出て子どもと交流することも。人間ぎらいの竜も、育てた子猫に引っ張られ心を開く。竜、猫、人間、三者の関係が読みどころだ。小説もそうだが、作中に固有名詞はほとんどなく、語り継がれてきたおとぎ話をイメージさせる。

2人の関係は王国にひとつの変化をもたらすことに……。
王族にしては魔力が弱い第一王子と彼に魔法を教える子猫、怖がりな魔法学校の少女と面倒見のいい母猫……そんな温かいエピソードが連作で展開される。
フワフワな猫の愛らしさ、竜のコワモテだけど守るべき者にはやさしいカッコよさ。その両者がうまく噛みあう。
賢い猫と人間の関係も理想的で、どこからかこんな猫がうちに迷いこんでこないかなと思ったりして。ゆったり読めて、やさしい気持ちになれるファンタジーだ。

彼女にとっては、人も竜もいつくしむべき子どもなのだ。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。










