宝島すごい!WEB

【インタビュー】阿部共実『月曜日の友達』もっと“自分ならではの表現”で――著者が目指した「ガール・ミーツ・ボーイ」の高みとは!?

公開:

更新:

人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、阿部共実先生!

まわりの雰囲気になじめずに戸惑いの日々をすごしていた、中学生の少女・水谷。「超能力を使える」と豪語する不思議な少年・月野との出会いで、少しずつ変わっていく……。
思春期をむかえた少年少女たちの心の機微をつぶさに描きだす阿部共実先生の“ガール・ミーツ・ボーイ”マンガ『月曜日の友達』。昨年発売された『このマンガがすごい!2018』のオトコ編にランクインした本作は、注目の第2巻が2月23日(金)に発売し、ますます読者から注目を集めています!
そして今回、阿部共実先生に『月曜日の友達』についてのインタビューをさせていただきました!!

阿部先生が描く時にビショビショになるまで苦労した●●●のシーンとは……!? 貴重な次回作にむけてのお話もうかがいました。

<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】阿部共実『月曜日の友達』ネームを完成させるまでに1年! 描きたかった思春期の中学生男女と“大友克洋的SF”、そして憧れの“自転車2人乗り”

著者:阿部共実

2010年商業誌デビュー。2014年、『ちーちゃんはちょっと足りない』(秋田書店)が『このマンガがすごい!2015』(宝島社)オンナ編第1位、第18回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 新人賞を受賞。著作に『空が灰色だから』『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』『ブラックギャラクシー6』(すべて秋田書店)などがある。本作『月曜日の友達』(小学館)の第2巻(完結)は2018年2月23日発売。


――作中の文章表現についてもう少しおうかがいします。主人公・水谷のセリフやモノローグによって情景が描写されるので、読者は月野や火木に対し、水谷を介して印象を抱くことになります。

阿部  たとえばラブコメだと、主人公とヒロインが小競りあいしてても、読者は両者の気持ちを把握している友だちみたいな目線だから「この2人は本当は両想いなんだな」 って安心感が約束されているものが多いイメージなんですが。

――そうですね。“高みの見物”感はあります。

阿部  でも桂正和先生の『I”s』は、ヒロインの伊織ちゃんの本心が本当にわからない。ほぼ一貴(=主人公)の一人称で描かれていたような記憶があります。

『I”s』

は「週刊少年ジャンプ」で1997年~2000年に連載された恋愛マンガ。伊織は主人公が想いを寄せるキュートなヒロインだ。

――やきもきさせられますよね。

阿部  本当に類を見ないくらいに、告白のシーンまでの片思いの臨場感と緊張感があって、疲れてしまうくらいでした。だからこそ感情移入と没入ができる。自分の日常がテーマのマンガは、『I”s』を読んだ影響があると思っています。

――わかりきらないから、おもしろい……と。

阿部  自分は、今のところ多くの作品でそうなのですが、あまりキャラをカチっと決めすぎずに描き始めます。ネームや作画をしながら「このキャラはどういう人間なんだろう?」とか「どういう表情や気持ちを見せてくれるんだろう?」って期待しながら、描いていってます。先述した最後までネームを直すのも、そういう部分が理由として大きいです。特に『月曜日の友達』は、こういうコミュニケーションの日常ものなので、人の心理がわかりすぎないほうが臨場感があると思います。だから、作者もわかりきらないでいる部分はあります。そもそも人というのは、自分の気持ちすら明確に理解できていないと思うので、わかりきらないことのほうが現実に近いと思います。

登場人物たちの家庭環境や詳細な心情、過去などは本作ですべてが語られることはない。だからこそ彼らの言動ひとつひとつが重要なのだ。

――自分の気持ちすら理解できないというのは、いくつになっても、思いあたるフシがありますね。

阿部  ただ、エンターテイメントとして考えた場合、読者にしっかりキャラの人格や思考を伝えたうえで展開するのもおもしろいですし。このあたりも作風かな、って思います。

――作画についてもお聞きしていきます。『このマンガがすごい!2018』本誌では、お気に入りのシーンとして、夜のプールで月野が「友達ができたよ。」と告白するコマ(第3話)を選んでくれました。

阿部  今作はネームを先行して進めていたので、「こういうカットを描きたい」と思いついたのは、ネーム段階でバシバシねじこんでいきました。これがまぁ、作画時にはたいへんの連続で、ネームを描いた時の自分を恨めしく思いましたね。

『このマンガがすごい!2018』で「お気に入りシーン」として、阿部先生が選んだこのシーン。水谷と月野が夜中のプールで遊ぶシーンだが、このシーンを描く際にも、阿部先生は実際に部屋で試したとか!

――「水のモチーフを描くのがけっこう好き」とのことでしたが、それは?

阿部  とにかく「水」というモチーフは、時間があるかぎりいろいろなことをして、そのたびにデジカメで写真を撮りまくりました。ほかにも木や花火や風、時間や季節で変動する光と影とかも撮りました。

――その写真撮影用に「水遊びで部屋がびしょびしょに」なったそうですが……。

阿部  どんな撮影もたいへんです。部屋での撮影は狭くてなかなかポジションとれないし。外の撮影は人目が気になったり。撮りだしたら、いろいろ試しているうちに楽しくなってきて一日中やってしまうので、時間が許さなくなってきます。

第1巻では水をあつかったシーンが多い。水のかたち、きらめきなどがリアルに描かれているのも、阿部先生が徹底して描写にこだわったからだ!

――では撮影と同様に、取材もかなりやったんですか?

阿部  今作では実際の施設も取材させてもらいました。ですが、それは初めてのことで、基本的に自分は取材や調べ物は最低限にとどめています。

――それはどういった理由で?

阿部  自分自身に対する感覚なのですが「想像の幅を狭めてしまう」っていうのがひとつ。もうひとつは「取材したことを役立てようとするあまり取材内容に引っ張られるかもしれない」という不安があるからです。

――あまりリアルに引っ張られすぎてもいけない、と。

阿部  そういう部分もあります。それに自分はリアルにこだわっていなくて、デフォルメ的表現が多いのですが、だからこそ、現実の感覚を自分を介してどうやってデフォルメ化するか、っていう楽しみが表現にはあると思います。ほかの作品の影響も強く残っていますが、もっと“自分ならではの表現”で、作風を占めていけたらなと思います。

――作画の面で苦労されたところは?

阿部  モブですね。生徒の群衆。学校の朝礼のシーンとかは「『フルメタル・ジャケット』めいた画面をつくってみたいなー」とか思いながらネームにいれました。楽しいことは楽しいのですが、かなりたいへんなところでした。あと、屋内の狭さというのもけっこう意識しています。

学校朝礼の様子。水谷が同級生と月野の話をしているシーンだが、生徒たち一人ひとりの表情や姿勢がそれぞれ違うので、オモシロイ!

――屋内の狭さ。

阿部  汚さとか、ちらかり具合です。テーマが日常なので、日本っぽさを出したかったですね。

水谷の家のリビング風景。飲みっぱなしのコップや出しっぱなしの本など、生活観や人物の性格がにじみ出ている。

――ほかにお気に入りのシーンはありますか?

阿部  パースがカチッと入ったシーンです。それと意識した引きの画面が多いです。それは学校という場所や、田舎町といったバックを印象づけておきたいという意図があったからです。田舎とか中学校、そのなかで生きている子ども。そういった部分が、今作ではキャラクター以上に作品テーマとして大きいです。

――たいへんだったシーンは?

阿部  プールのシーン(第3話)や最終話は、かなりしんどかったですね。構図を決める下書きで、アタリの段階でつながりを確認しながら、何ページも何度も全体的にリテイクしました。

――本作は「静」と「動」のシーンが印象的です。それが読者の想像力を喚起するのかな、と思いました。

阿部  あまり意識していない気がします。ただ、構図を決める際は、どういう構図にすると画面の臨場感が出るか、そのパターン出しと、シーンのつなぎを意識しています。具体的にいうとコマ割りや視線誘導でしょうか。そこは時間がかかりました。

月曜日が楽しみになるように……阿部先生の本作への想い

―描いている時に、読者に「こう思ってもらいたい」とか「こういうことについて考えてほしい」といった思いはありましたか?

阿部  逆にそういうことを考えずに読んでもらいたいですね。いろんな感想があったらうれしいです。読む人の経験や環境、性格で、イメージが変わる部分はけっこうあると思います。そのかわりこちらも、その甲斐があるようにたくさん詰めこむよう努めています。そのなかでお好きなように受け取ってもらったり、楽しんでもらえれば、と思います。

――読者がいろんな受け取り方をしてもよい、と。

阿部  自分は自分のマンガを全力で描きますが、読者の方には好きに読んでもらいたい、という気持ちもあります。押しつけるよりかは、読者のなかで何か少しでも感じることがあれば幸いです。別に何かを感じてもらわなくたっても、暇つぶしになれば、それだけでも光栄です。

――読者の想像力や読む楽しみは制限したくないんですね。

阿部  そうですね。そしてこれは昔から思っていることなのですが、マンガは読者の日々の生活のちょっとしたプラスになって、生活に楽しみを与えられればいい、と思います。たとえば「週刊スピリッツ」は、多くの人にとって気の重い月曜日に出ます。「会社や学校が嫌だなあ」って気持ちのなかに、少しでも「明日は「スピリッツ」の発売日だから、それは楽しみだ」みたいになればいいなと。そういう気持ちをよりイメージして『月曜日の友達』はつくりました。連載は隔週でしたけど。

――たしかにマンガ誌は、我々にとって「月曜日の友達」です!

阿部  月曜日は「週刊少年ジャンプ」や「ヤングマガジン」も出て、メジャー3誌が日本に元気を配ってる、って感じがすばらしいです。自分には「エンターテイメント業の人たちとはチーム戦をしてる」という気持ちもあります。大きなくくりですが。少しでも日本の元気に貢献できたら光栄ですが、ただこちらとしても、一読で単行本も必要だと思わせるくらいには引きずりこみたいという気持ちでやっています。

――2月23日(金)には第2集が発売されました。まだ未読の方へは、どういう作品と説明しましょうか?

阿部  だれでも読めるマンガをめざしました。中学生の女の子が男の子と出会い、友情や青春にてんやわんや、って感じです。そのへんを楽しんでもらえれば。

第2巻では、ある出来事から、2人の大事な月曜日の約束がなくなる事態に!
元気印の水谷が涙するシーンも……。いったい2人に何があったのか!?

――では、次回作の展望をお聞かせください。

阿部  言葉は多くのジャンルに与えられた武器だと思います。しかし、今作のようにセリフや絵の比重が強い作品は、自分には何かと難しく、とにかくたいへんでした。時間をたくさんいただいたうえで、好き勝手にやらせてもらってできたマンガです。すごくやりがいがありましたが、時間かけて描きだめの短い巻で終わるというのはしばらくはもういいかなと思います。それに週刊や月刊や人気長編作品など常にマンガ業界を盛りあげてくださってる人がいるから、短編を数年に1~2冊だけ出すというスタイルも許されるというのもあるので、個人的にもいろいろ変えていきたいです。どうなるかわかりませんが。

――え、そうなんですか?

阿部  次からは、また作風のバランスとかも変わっていくと思います。次回作では、またあらたな自分を見せられたらな、と思っています。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

阿部  外面的な作風は徐々に変えていっていますが、描いてることは昔から大きく変わってないと思います。いままでの自分の作品を読んでくれた方にも読んでもらえれば幸いです。『月曜日の友達』で初めて自分の作品に触れた方も、ほかの作品に興味を持っていただけたら幸いです。

――本当にすばらしい作品をありがとうございました。

取材・構成:加山竜司

<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】阿部共実『月曜日の友達』ネームを完成させるまでに1年! 描きたかった思春期の中学生男女と“大友克洋的SF”、そして憧れの“自転車2人乗り”

©阿部共実/小学館


コラム一覧へ戻る