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【インタビュー】ユペチカ『サトコとナダ』おもしろさの秘密には、ある「神様」の存在があった!

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人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、ユペチカ先生!

ある日、アメリカ留学をした日本人大学生・サトコは、現地でルームシェアをすることに。さっそく家に行ってみるとそこには、イスラム教徒の女子・ナダが! まったく違う国・環境・文化で育った2人の女子の生活は不安でいっぱい……と思いきや、ビックリするくらい2人でアメリカ生活をエンジョイ!?

ときには悩み、ときには思いっきりハメをはずす、そんな等身大の女の子たちの姿を描いたマンガ『サトコとナダ』。『このマンガがすごい!2018』ではオンナ編第3位にランクインした本作ですが、今回、この話題作を手がけたユペチカ先生にインタビューをさせていただきました。

本作が生まれたきっかけ、さらには『サトコとナダ』を支える“神様”の存在までもが明らかに……!?

著者:ユペチカ

『サトコとナダ』がデビュー作となる。「ツイ4」(星海社)で連載中。タピオカミルクティーが好き。

『サトコとナダ』最新第3巻は4月27日(金)発売予定。

イスラム教徒への間違った思いこみに気づいたことがきっかけに

――『サトコとナダ』はユペチカ先生の留学体験がもとになっているそうですが、この作品を描くに至ったきっかけを教えてください。

ユペチカ  はい。ときどきコミックエッセイと誤解されることがあるのですが、本作はフィクションです。なので、サトコにはもちろん私の視点も反映されていますが、私そのものではないですし、ナダもいろんなイスラム教徒の女の子たちをもとにつくったキャラクターです。私が海外で、イスラム教徒の女の子たちに出会って、自分が持っていたイスラム教徒の方のイメージとまったく違うなと、徐々に気づいていったことがあって。そんな思いをマンガに描いてツイッターに投稿したのが始まりです。

最初はナダとの暮らしにドキドキしていたサトコも、チャーミングなナダの素顔を知って仲よくなる。

――自分の気づいたことを聞いてもらいたい、みたいな感じで?

ユペチカ  「ちょっと聞いて!」みたいな軽い感じですね。フォロワーさんにいろんな国の文化に興味のある人が多かったので、プレゼンテーションみたいなことができたらと思って始めました。どこかで連載するとか本になるとかを目指したわけではなかったです。

――まず一番に描きたいと思ったのは?

ユペチカ  お恥ずかしいんですけど当時、イスラム教について本当に無知で。彼女たちが着てる黒い衣装は「着させられてる」ものだとずっと思ってたんですね。抑圧の象徴と見られてるところがある。でも、彼女たちがいうには自分から着ているのだと。それにまずカルチャーショックを受けましたね。

ナダにとっては「無敵の盾」。文化の理解はもちろんだけど、衣装を着ている本人の気持ちも大事なものだ。

――いや、私もそう思ってましたよ。『サトコとナダ』は、無知からくる誤解を解くテキストとしてもスタンダードになりつつあると思います。個人が実際に見聞きしたことを描かれているからこそ説得力があります。

ユペチカ  触れあったなかで知って、それから自分で調べたりもしています。アメリカにきているイスラム教徒の子たちは、母国の一般的な家庭の子たちよりもかなり開放的な家庭に育っているので、私が触れている人たちがすべてではないということは忘れないようにしているし、みなさんにも理解していただきたいところではあります。

――ナダはイスラム教徒女子のひとり、サトコも日本人女子の一例であると。

ユペチカ  はい、そうです。どうしても異文化交流ものとなると、「アラブ人はこうだ」といっているように見えてしまいそうなので、決めつけにならないよう努力しています。

――自分を顧みると、「日本人はこうだ」とひとくくりで紹介されるのには大いに抵抗がありますしね。本作はアメリカが舞台なので、サトコもナダも異邦人同士であるところに新鮮さを感じます。

ユペチカ  ありがとうございます。そこは意識してねらったわけではなかったのですが、今考えるとすごくいい構図になったと思っています。

――ナダのキャラクターを設定するうえでの意図は?

ユペチカ  実際に接するまで、イスラム教徒の女の子は物静かで控えめなイメージだったんですが、じつはそんなことはなかった。だから、ナダは元気でちょっと高飛車なところもあって、お茶目なキャラクターにしたいと思いました。そもそもイスラム教徒の女の子は、私たちと何も変わらなかったんです。やかましい子もいれば物静かな子もいる。これって、きっとどこの国でもいっしょのはずですよね。

――ホントにそうですよね。イスラム教徒女子たちとの女子会のエピソードからもそれが伝わってきます。

女子会になればアクセル全開のナダたち! 楽しい時はめいっぱい楽しまなきゃソンだよね♪

ユペチカ  めっちゃ楽しかったし、それまでみんなの髪型とか見たことがなかったのでびっくりしました。シルバーに毛先を青くしてる子もいて……。すごい露出の多いレースクイーンみたいなワンピースの子、日本でいうゴスロリ系の子もいて。逆に考えるとニカブの下ならなんでも着られるんだなと!

――隠れている部分で楽しむという発想と、隠れているから下はパジャマでもノーメイクでもいいという発想の両方があって唸らされます(笑)。

ユペチカ  「ニカブの下はパジャマ」も実話です。大学のトイレでパジャマで歯を磨いてる子が、いそいそニカブを着て出ていったので唖然としました(笑)。このあたりは本当に「着させられてるもの」と思ってたなかに、そんな自由なや応用編があったなんてと驚かされたことです。

衣装にもいろんな種類がある。利便性やデザイン性を楽しめる、という面はあまり知られていない。

海外生活で得た、ある“気づき”

――そんな海外生活で得た経験が『サトコとナダ』につながっていくのですね。

ユペチカ  海外で生活をしてみて「人とはわかりあえないな」と気づきました。この言い方はちょっと語弊があるかな……。「すべてはわかりあえないけれど、いっしょにいられる」ということです。たとえばイスラム教徒の子に「え、豚肉食べるの? 信じられないわ~」といわれたりするわけですよ。でも、私が豚肉を食べることは否定しない。イスラム教徒の人はお酒も飲みませんが「今、お酒飲んでいい?」と聞けば「いいよ」といってくれる。「お祈りの時間だったから遅くなった」といわれたら、「も~しょうがないなあ」と思ったりして。違いは多くてもいっしょにいられるんだなあと思えるようになりました。

お互いの文化、生活習慣を理解しているからこそ、同じ時間を共有できるのだ!

――日本に帰っても同じように思うことがありますか?

ユペチカ  そうですね。それまでは「あの人は私と違うから」と、交友関係をせばめていた気がします。「賢い子のグループ」とか「派手な子のグループ」とか決めつけて遠ざけていた。そういうことがなくなって、日本に帰ってきてから友だちが増えました。……っていうか、楽しくなりました。

――いい言葉ですね。「楽しくなる」って。

ユペチカ  海外に行く、行かない関係なく気づいてる人は気づいてるんでしょうけど。私の場合、本当にこれに気づいたことが大きかったです。

――「アメリカに来てよかった」とか「この時間がずっと続けばいいのに」とか、ハッピーな言葉が多い作品です。異文化交流の楽しさもありますが、やはりこういうところが『サトコとナダ』の魅力なのだと思います。

最初はうまくいかないこともあったサトコとナダも、生活をともにし、いろんな人と出会い、変わっていった。

ユペチカ  ありがとうございます。このマンガは日本女子とイスラム教徒女子という縛りではなく、サトコとナダという2人の女の子を描いていると思っています。2人が成長した姿を見せられるよう、最後までがんばって描いていきたいです。

『このマンガがすごい!2018』でユペチカ先生が「お気に入りシーン」にあげたシーン。ユペチカ先生がめざす『サトコとナダ』が描けた話だとおっしゃっていた。

――作品を描くなかで苦労しているのは?

ユペチカ  非常にセンシティブなことにも触れる内容なので、監修の西森マリーさんにしっかり見ていただいているのですが、NGが出た時、どう納得できるかたちで表現していくかを詰めるところですね。

編集担当  イスラム教徒の方々に失礼だったり、誤解を招く表現があってはいけないので、指摘があった場合は必ず相談しながら修正を行います。

ユペチカ  たとえばナダが車を運転するエピソードはどうなのか、という指摘もありました。ですが最終的には、舞台はアメリカだし、このまま描きましょう、ということにしました。そうしたら、発表した半年後くらいにサウジアラビアで女性の運転が許可されることになったんです。こういうこともあったりするので、決断が大事になってきます。西森さんはこのマンガがよくなるように、嫌な思いをする方が、できるかぎりいないように厳しく監修してくださっているありがたい存在です。私は西森さんとは直接やりとりせず、編集さんに間に立ってもらっています。

不審な男の車に不注意で乗ってしまったサトコをナダが車で追いかけ、助けだすというエピソード。2人の仲もぐっと濃くなった印象的な話だ。

編集担当  作家さんと仲よくなってしまうと、判定が甘くなってしまう可能性があるかもしれないので。あくまで客観的な目でチェックしていただくために私が間に入っています。

ユペチカ  ネームだけではなく、ペン入れが終わってから絵の面でもおかしいところがないかしっかり見ていただいています。

『サトコとナダ』の演出を支える“神様”の存在

――「横長」の4コマを描き始めたのは「ツイ4」で連載することになってからですか?

ユペチカ  そうです。個人で公開していた時は、一般的な4コマサイズで描いてたのですけど。結果としてはこうしてすごくよかったですね。

――セリフが横書きになっているのが、本作にすごく合ってますよね。

ユペチカ  異国感が増したかなと思います。連載を始めるにあたって編集さんと、縦描きにするか横描きにするかフォーマットをいろいろ検討したんですけど、横描きにすると洋画っぽい雰囲気になるなと感じました。

編集担当  横書きだと左のフキダシから読みたくなりますから、1コマのなかのフキダシの並べ方をどうするかを検討して。最終的に、横書きだけど右から左にフキダシを読むようにしました。

ユペチカ  日本人の読み方に合ってるほうがいいのかなと。

編集担当  ヒントになったのはLINEです。みなさん、横書きでも上から順に読むのに慣れていると思ったので。

――解説ネームもあったりと、かなり文字がこんでいるページもありますが、それにしてはすごく読みやすい。フキダシの書体もかなり変えてますよね。

本作はイスラム文化やアメリカ文化などの解説が入ることも多く、4コマゆえ、そのフキダシのレイアウトや書体の選択はとてもサジ加減が難しいとのこと……。

ユペチカ  そこは編集さん頼みです。

編集担当  じつは弊社にはフォントまわりを専門にチェックする担当がいるんです。単行本の奥付にも「フォントディレクター」とクレジットを入れているんですが、この方が「ツイ4」全部のフォントの選定やDTPを管理しているんです。なので「ツイ4」の作品、それぞれフォントが違うんです。連載前に作品ごとに基本になるフォントを精査していただいています。

――「フォントディレクター」っていうクレジット、初めて見ました! 『サトコとナダ』の場合は、1ページのなかでもかなり違うフォントを使っていますが?

編集担当  基本に則りつつ、私が選んでいます。あまり変えすぎるとゴチャゴチャして見づらくなってしまうので気をつけているんですが。ここはこだわっているのですが、あまり気づいてもらえないところなので、うれしいですね。

――自然に見えているってことじゃないでしょうか。

編集担当  フォントディレクターの紺野さんは星海社の取締役であり、あのスティーブ・ジョブズともフォントについて熱く語りあった「DTP界の神様」といわれる存在なんですよ。イチローにバットの握り方を教えてもらうくらいの感じで、常に恐縮してます。

ユペチカ  また、異国感を出すためにサトコ以外の子のセリフは「英語から日本語に訳した」みたいな言い回しを心がけてます。ふつうの日本語からするとちょっと不自然な言い回しというか。それで、ナダには「~かしら」といわせたりしてるんです。引っかかるようで味があるなと思っていて。ちょっとだけそんな感じを意識してるんです。

――そういうところでも印象のコントロールが行われていたんですね! 目からウロコです。

ユペチカ  編集さんといろいろ試みてはいます。「不自然すぎる」「まわりくどすぎる」と編集さんに赤字を入れられることは、たくさんありますけど(笑)。

取材・構成:粟生こずえ

■次回予告

次回のインタビューでは、まだあまり知られていないユペチカ先生の意外な過去などもお話をうかがい、さらに『サトコとナダ』の魅力に迫ります!
インタビュー第2弾は4月9日(月)公開予定です! お楽しみに!

©ユペチカ/西森マリー/星海社


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